泰成君、歌舞伎に行く

泰成君は、小学校4年生。

いつもの通り、土曜日は、銀座でお買い物帰りのママと待ち合わせ。

今日は、歌舞伎に連れて行ってもらうのだ。

製薬メーカーは、野球のチケットや相撲のチケットや、歌舞伎のチケットをくれる。

映画のチケットは、祖父がどこからか貰ったものが、我が家に流れていたようだ。

そこに、父が行く事はなかった。

母は、叔母と、泰成君と行くのだ。

大人の世界で、物語には関心がなかったが、劇場の雰囲気、来る人のおしゃれ、服装は印象に残っている。

歌舞伎座は、正装で行くのだ。

泰成君も、ジャケットや、子供用の蝶ネクタイをする。

泰成君は、母から、お見合いは、歌舞伎座でするのだと教わった。

和服の女性親子は、お見合いだろうと、泰成君は、推察した。

懐かしく話をする母の様子から、母もお見合いは歌舞伎座だったのだろうと思った。

でも、それが、父とだったのかは、確かめなかった。

父の趣味からすると、違うような気もする。

婚約してからの、両親のデート場所は、銀座の地下のバーだった事は知っている。

私も、つい最近まで、通っていたからだ。

老舗の店が残っているのが、銀座の良いところだ。

銀座で、1番は、歌舞伎座だ。

当時は、歌舞伎やコンサート、オペラには、正装して行く事が当たり前で、守られていた。

最近はそうではない。

軽装、カジュアルで、クラシックを聴きにコンサートホールに来る人を見ると、失礼というよりも、楽しみ方を知らないのだな、と、思う。

これも、社会的礼儀、教養のうちだと思うのだが、今の時代は、そのような事を言ったら、非難されるだろう。

泰成君は、政治家にならなくて良かった。

銀座医院は、その、歌舞伎座と一体となった、歌舞伎座タワーの中にある。

歌舞伎役者が、怪我をして、専用エレベーターで、治療に来た事もあった。

そんな事があった時、医院の先生方、職員に歌舞伎を観た経験を聞いたら、誰1人いなかった。

私は、その事にショックを受けた。

今の時代は、医師すらも、歌舞伎を一度も観た事がないのだ。

確かに、昔も自分で買ったわけではなかった。

患者さんや、薬のプロパーさんが、くれたのだ。

医師への贈答の習慣がなくなったのは、良い事だと思う。

でも、歌舞伎座タワーで働く人も、歌舞伎に関心がないのでは、歌舞伎も古典芸能になったのだ。

古典芸能は、教養として、教えられなければ、映画のように、観にいく人は少ない。

それで、私は、毎年、多数の歌舞伎の良い席のチケットを職員にプレゼントする事を始めた。

永年勤続表彰でも、多数招待している。

初めて歌舞伎を観た職員は、皆、感激して、歌舞伎ファンになっている。

映画国宝の影響も大きいと思う。

今でも、年間1000人は、職員を歌舞伎に招待している。

これも、湖山の文化活動だ。

泰成君は、新年1月も、歌舞伎を観に行く。

新橋演舞場だったかもしれない。

とにかく、正月は、歌舞伎だ。

泰成君は、和服は着ないが。

新しい、干支のネクタイを締めているはずだ。

馬のネクタイはすでに持っているが、毎年、新作を銀座の老舗のネクタイ店で買う。

新年の来客の方は、お楽しみにして頂きたい。

血糖222 体重75.8   お餅は遠慮する事にした。湖山泰成

銀座湖山日記

Posted by Meguro