試写会の雰囲気
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泰成君は、小学校5年生。
土曜日の授業は半ドン、午前中で終わる。
当時、月1回、土曜日の午後、虎ノ門の、当時の自転車会館で、映画友の会の会合があった。
小学校の教室位の部屋で、雑誌映画の友の愛読者中心に、映画ファンが集結していた。
大学生や、浪人の若者が多かった。
泰成君は、真面目な優等生だったので、いつも中央最前席に座って大人しく聞いていた。
ランドセルを膝の上に置いて。
講師は、毎月、当時、テレビの日曜映画劇場の解説で有名になった、淀川長治。
ヨドチョウと呼ばれて愛されていた。
この人は、映画の宣伝部出身なので、映画の悪口を絶対言わない。
今と違って、ネットなどない。
この人は、試写会で観てきた新作を、宣伝ビラ1枚で解説する。
その面白い事、面白い事。
落語より面白い事、請け負って間違いない。
女優の話より、アランドロン、ジャンポールベルモンド、バートランカスターなど、男優の話に熱が籠る。
女性には、全く関心のない人だった。
その事の理由は、小学生の泰成君には、知る由はなかった。
大人にならないとわからない事もあるのは、泰成君は、映画に教わったのだ。
淀長さんの話には、試写会の風景も多かった。
皆、怖い顔で真剣に映画を観ている。
批評を書くので、座席には、小型ライトが付いており、皆さんメモをとりながら映画を観ている。
試写室内でも、煙草を吸っているので、試写室内に、煙が漂っている。
泰成君にとっては、試写室は大人の憧れの場所となった。
その後、殆どの映画会社の試写室に行く機会があったが、コロナ以降、機会はほとんどなくなった。
寂しいに尽きる。
今日は、秋の映画祭の関係で、久しぶりに試写室を訪れる。
どんな、怖い人が、真剣に映画を観ているのか。
泰成君は、昔と変わらず、緊張して、ワクワクして映画を観ているはずだ。
初恋のトキメキは、試写会で体験した。
勿論、銀幕の彼女に。
「わらの女」のジーナ・ロロブリジッタだったか、「山猫」のクラウディナ・カルディナーレだったか。
今なら、100歳近いはず。
その姿は、銀幕のままだ。
泰成君の記憶には、当時の姿のままで、残っている。
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湖山G代表 サンダーバード代表 健康の駅理事
映画少年 湖山 泰成