1点10円の世界
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不動産バブルの頃、銀座の友達のお店は、輝いて見えた。
高級品が並び、人は溢れ、儲かって仕方がない、投資先を探している、医療事業をしてみたい。
そんな人が、銀座の、赤字で一度潰れた病院を、親子で必死に再建した私に、多数尋ねてくる。
何を言っているのですか。
銀座のコーヒーと地方のコーヒーの値段を比べてください。
銀座のホテルと、地方都市のホテルの値段を比べてください。
どれだけ違うでしょうか。
でも、医療の世界は、全国1点10円。
社会主義の世界です。
銀座は、自由主義、資本主義の世界。
でも、医療は、全国平等の共産主義社会。
そう言っても、納得してくれる人はいなかった。
銀座には、こんなに人が集まる。
開業すれば、千客万来、自分の診療所の前には、患者が並ぶはずだ。
そう信じる地方の医師会の先生もいた。
東京の医師の平均年収は、全国で1番安い。
一方、看護師や、パラメディカル、事務の給与は、全国1番高い。
医師が、都会に集まるのは収入の為ではない。
所得を犠牲にしても、都会でなければ、専門家として患者が集まらない。
外科医ならば、自分1人では手術はできない。
優秀な手術スタッフ、機器が必要。
何よりも、その専門医療を必要とする患者が集まってこないと、成り立たない。
赤髭先生、ブラックジャック1人で成り立つ医療の範囲は少ない。
専門医の時代だ。
特に、若い医師は、大病院でないと働けないような教育を受けてきた。
既に、過疎地の行政は、莫大な所得保障で、開業する医師を募っているが、医師は集まらない。
弁護士も会計士も地方にはいない。
殆ど東京に集まっていると思う。
何故、医師は東京に集まるのか。
優秀な医師の連携が必要だから。
子供の教育の為。
奥さんが地方に行きたがらない。
地方に行ってくれる医師は、皆単身赴任だ。
奥さんと子供は、都会に残っている。
子供を、医学部に進学させる為だと言う。
1点10円を地方を11円にしても、医師の東京偏在は、さほど改善しないと思う。
地方にアルバイトに行く人は増えるかもしれないが。
都会の専門医師が、オンライン診療で、全国の患者を診察する。
医療DXで、患者のデータはどこでも集まる。
そういう社会にするしかないと思う。
その内、世界中の名医が、医療AIを使って、多数の診断をできるようになる。
翻訳、通訳もほぼ、コンピューターで可能だ。
アップルウォッチとアイフォンと、医療AIで、可能な慢性疾患治療は増える。
緊急手術を行う為の大病院と、搬送の為のヘリや高機能救急車を増やした方が現実的ではないかと思う。
優秀な専門医ほど、他の診療科の優秀な医師との連携が必要。
医師が他科の優秀な医師を必要とする。
更に、優秀な医師ほど、優秀な看護師や、理学療法士や、放射線技師や、検査技師を必要とする。
今は、術後の介護も必要な老人患者が増えた。
大病院で働く、医療介護福祉師も必要になるだろう。
現代の医療こそ、チーム医療。
医師1人でできる医療ばかりではないのだ。
また、医師の専権でしか出来ない診療の一部を、看護師や検査技師でできるようにするのも、現実的だと思う。
オンライン診療も、増えるだろう。
お金の配分だけで、医師を差配する事は出来ない。
医師の使命感に頼る事にも、限界がある。
韓国のように、医学部の定員を増やす事は、効果がある。
でも、日本では出来ないだろう。
日本において、医師のストライキが起きるとは思いたくないが。
医師の都市集中を是正する為に、財務省が医療保険改正を考えているようだ。
都会の診療報酬を下げて、開業規制をする。
上手くいかないと、私は思うのだ。
それでも、医師は、都会を離れないだろう。
大病院での勤務医は増えるかもしれない。
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