安寧な日々
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小学生の泰成君は、学校の図書館の偉人伝を全部読み終えた。
そして、分かったことは、偉い人の人生は、三つに分類できる。
戦争に勝つか、平和に貢献して英雄になる。
科学者になって、素晴らしい発見をする。
ヒマラヤか、高野山に篭って、世を捨て修行をする。
泰成君のその後の人生はどうか。
30年前に、全国の中山間地、過疎地、島々を巡り、介護施設を開設した。
その時、いつも気になったのは、地域の寂れた神社寺院。
そこに、グループホームやデイサービスを開設したら良いのに。
それこそ、悩める庶民の現代の神社寺院となる。
毎日、境内の掃除をし、水を汲み、お粥を啜る。
滝行、写経、座禅の毎日。
精進料理の宿坊生活を送る。
さて、68歳となった、現在の泰成君の生活は如何なものか。
毎朝、冷たいシャワーを浴びる、滝行の毎日。
新聞や報告書をメモする、写経の毎日。
役員会、会議会議で、じっと我慢をする座禅の毎日。
お酒とお菓子を我慢して、妹の手作りの野菜スープの毎日。
望まずとも、竹林の七賢のような、世俗を脱した生活の毎日。
少なくとも、ネオンの灯りより、星空を見上げる夜の毎日だ。
マット・デイモン主演のグッド・ウイル・ハンティング。
デイゼル・ワシントン主演のイコライザー。
クリント・イーストウッド主演のグラン・トリノ。
静かな人生を送る、気高い男の物語。
そうだ、日本には、役所広司主演のパーフェクト・デイズがあった。
早速、観に行かなくては。
一方、泰成君の孤高の日々は、これからも続く。
完璧ではないが、安寧を望む日々が。
波乱の人生は、お望みではないが、この嵐を乗り越えねば、静かな港には辿り着けない。
漂白の日々かもしれない。
とにかくも、朝は明け、物語は、今日も続く。
パルスオキシメーター 98・99・98
体温36.6 血糖175
銀座の御隠居 代表 湖山 泰成