エレベーターかエスカレーターか
泰成君は幼稚園児。
お母さんが迎えに来てくれる。
帰りは、ターミナル駅のデパートによって、お惣菜を買う事もある。
エレベーターは、大人に挟まれて、息苦しいので、お母さんの腕の中に入り守ってもらう。
最初に屋上に上がる。
遊技場があり、熱帯魚売り場があり、ゴルフ練習場があり、素人っぽいコンサートもやっている。
夕方だとお父さん達が、生ビールを飲んでいる。
そんな、百貨店の屋上の風景はもう、なくなっているのだろう。
確かめに行ってみようか。
最上階はお中元の催事場。
その下は、デパート食堂街。
泰成君は、いつもオムレツか、チャーハン。
スパゲッテイは、服を汚すので、ママの目が厳しい。
泰成君は、エレベーターよりも、エスカレーターの方が、好き。
各階の商品を見れる。
どの階も、豊さに溢れていた。
デパートに行く日は、毎日が、クリスマスだ。
貧しくとも、未来には夢があった。
大人になるのが、憧れだった。
自分は、立派な大人になる。
パパみたいに。
何故、あんなに素朴に将来に夢を持てたのだろう。
その、大人になる未来への夢に不安を感じたのは、1963年11月23日金曜日の明け方。
泰成君は、家族でドライブに出かける為に、車庫を出たばかりの自動車の中だった。
明け方で、まだ、外は暗い。
ラジオから、ケネディ大統領の暗殺のニュースが流れてきた。
泰成君は、自分も将来は、ケネディのような政治家になると信じていた。
でも、立派な政治家になるのは考え直そうと思った。
人の死、暗殺を意識した、最初だと思う。
泰成君は小学校3年生だった。
この事件で、政治家志望者は1名減ったわけだ。
エレベーターで屋上に行く人生。
それより、エスカレーターで、各階を見ながら1階づつ上がる。
先日、久しぶりにエスカレーターで、レストラン階から1階に降りた。
その途中の折り返しで、ディズニーの人形が展示販売をしていた。
一目見て、立ち止まり、その場で、60体全て購入した。
子供の心に、大人の財布。
両親がいたら、怒られたろうな。
パルスオキシメーター 97・96・97
体温36.6 血糖223
白米の後は散歩が日課 代表 湖山 泰成