蟄居で読書

学生の頃の話。
ある週末。
新宿の歌舞伎町からゴールデン街辺りで、明け方までカウンターのある小さな酒場で、語り明かしていた。
作家や、編集者、役者、映画監督と。
皆、売れない、若い卵か、老人の元監督などと称する謎の老人がいた。
自称、映画評論家で、巨匠監督の悪口ばかり言う人もいた。
学生運動で人生を斜めに見て、何か引きずっているような人ばかりだった。
明るい未来を語る人はいなかった。
過去の人生の過ちを、何か懐かしい思い出のように大事にしている人ばかり。
酔えば、過去の失恋の心の痛みを懐かしい思い出のように語る情けない男ばかり。
だから、カウンターのママは、優しく励ます乳母のようだった。
酔ってくると、酔い覚ましのつもりで、歌舞伎町の映画館に入る。
SFやミステリー、アクション。
つまり、あまりストーリーの関係ない、映像が刺激的な映画ばかり。
殆ど、寝ていたと思う。
明け方になると、ガード下の24時間営業の食堂で深夜道路工事をしていたような叔父さん達にまじって、焼き魚定食。
仕事明けでビールを飲んでいる人も多かった。
それでも、家に帰れず、新宿御苑で、昼までベンチで座っている。
その頃からだったと思う。
浮浪者対策で、ベンチで横になれないように、鉄で座席を区切ったのは。
太陽が登って、眩しくなるくらいの時間になると帰宅。
両親は、ゴルフで不在。
ベットに入ると、眠れず、そのまま、週明けまで、本を読む。
ベットサイドには、20冊くらいは積んであって、週明けまで、延々読書をする。
全部読み切るまで、寝床に潜り込んでいる。
お酒が抜ける迄、寝床に籠り、寝室に蟄居。
今も、酒を全く飲まなくなっても、週末は寝床で読書。
積んである本の背表紙を見ると、楽しくなる。
劇場で、緞帳が上がる前の気分。
枕の横に、お菓子の箱が積んであると言っても良い。
でも、そのワクワクする高揚する気分も、今はない。
比叡山に籠って座禅をしているとは、こういう気分なのだろうか。
現実社会の修羅場の毎日と、1人蟄居の時間と。
週末の別荘というほどの、優雅さはない。
でも、静かな老人の時間も、さほど悪くはない。
若い時のコーヒーは、紅茶に変わった。
1人分のご飯を炊くのも、楽しい。
老人蟄居と言うから、寂しくなる。
今は、ソロキャンプと言うのだろう。

パルスオキシメーター 98・99・99
体温36.0 血糖174

銀座にテントを張る 代表 湖山 泰成

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