映画『たしかにあった幻』
医療福祉の映画は、殆ど観ている。
職業上の義務だと思って、律儀に観に行く。
つまり、楽しめない。
映画は、幻を観に行くのであるから、日々の現実の医療の場は、私には、幻にならない。
院長だった父も、そうらしく、小説「白い巨塔」も、アメリカテレビ番組「ベン・ケーシー」も、現実は全く違うと、いつも、苦々しい口調で不満を言っていた。
この映画は、小児臓器移植の社会的問題と、家族の心理的苦しみを、真っ向から受け止めている。
本作の脚本・監督は河瀬直美。
高いテーマ性。
もったいぶった、凝った演出。
セリフのない、緊張した役者の表情。
そこに、多用される、日本らしい風景。
山間を渡る風、川の映像。
まるで、山間地を渡る霧が、登場人物の心を見え隠れさせる。
外国人が、期待する日本風景、イメージ。
外国の審査員には、異国文化の日本の神秘性を掻き立てるのだろう。
河瀬ワールド全開の、彼女の代表作となるだろう。
死と対峙する、医療の現場は、究極の人生の現実。
私にとっては、「確かにあった現実」なのだ。
でも、このテーマを選んだ監督には、医療人として、感謝したい。
何故、日本だけ、臓器移植が少なく、透析が多いのか。
これも、生命倫理をめぐる、日本人の文化なのだろう。
私は、眼の角膜のドナー登録はしてある。
角膜は、120歳まで、提供可能なのだ。
血糖191 粒らな瞳のおじさん 湖山泰成
