現役棋士

私は、業界団体役員と言うポジションについた事がない。
今までも、そのような要請がなかったわけではないが、その時は、招待された料亭で、土下座して、お断りしてしまった。
昔の事である。
父は、首相の主治医をしているだけで、大病院の院長就任や、自伝の出版などの話が舞い込んだが、全て即断でお断りしていた。
私が、若くして、病院会や、ロータリーのメンバーになったのは、実は、全て父が断ったので、息子の小生にお鉢が回ってきたのである。
父は、診療を通して、患者と24時間、人生を終えるまで家族のように関わってきた。
ゴルフも、会食も、囲碁も将棋も、全て友人であり、患者である人々と共に楽しみ、そして喜び、自らも、医師として、職業人として生き通して来た。
業界にも、政治にも、診療以外の事には、全く関心のない人だった。
病院の経営などは、信じられないくらい、関心のない人だった。
赤字の年は、厚労省のせいだから医師の責任ではない、などと公言していた。
経営者の小生には、全くもって困った医者だったが、それは、全部、泰成、お前に任せたよ、と言う意味だったのだろう。
27歳の新人経営者には、難儀な人生に思えた。
その私も、今月は、70歳を迎える。
もはや、隠居の歳を、はるか超えてしまった。
創業ファウンダーのオーナー経営者に、引退の出口はない。
経団連の会長も、医師会、病院会の会長も、現役の経営者、医師である事が不文律だ。
現役のトップ棋士である事と、業界団体のトップである事は、無理に決まっている。
業界団体のトップは、尊敬される技能者であり、人格者であり、多くの会員から信頼される人であり、社会に、政治に、行政に話ができる人でなければならない。
現役選手であることと、業界コミッショナーである事と、政治家役所との窓口を務める事の全てを担う事は、神業だ。
私は、終身現役経営者であり、湖山G長老である事を死ぬまで続ける。
昨日から、新卒入職式が続く。
毎年の事だが、孫のような年の新人を見ると、己の老いと、失われた青春を思う。
他の道の人生がなかったのだろうか。
これで良かったのだ。これしか無いのだ。
毎年、そう自ら説得する。
納得はしていない。
結局、若者の未来に、我が夢と幸せを託す。
自分に子供がいなくとも、自然にそう思える。
人間の本能なのだと思う。
昨夜、保育園の卒園式のビデオを、寝る前に観た。
園児の表情は、天使だ。
泰成君も、そういう顔をしていた時があったはずだ。
今日は、その園児の顔を見に北へ旅立つ。
外は、雨。
また、寒くなりそうだ。
血糖212 湖山G代表 サンダーバード代表 健康の駅副会長 日本棋士界評議員 湖山泰成